コラム

新型コロナ社会を生き抜くために知っておきたいこと 2

共生社会の足音

弁護士 大胡田 誠

月刊『視覚障害』2020年8月号掲載

1.はじめに

緊急事態宣言が解除されても、コロナ禍は私たちの生活の様々な場面に影響を及ぼし続けている。私の法律事務所で行っている無料電話相談には、ここにきて、生活苦やお金に関する不安を訴える案件が増えてきた。

やはり、顧客との接触が避けられないあはき業に携わる方たちから寄せられる相談は切実だ。例えば、マッサージの治療院を経営しているが、顧客離れで収入が減少し事業が立ち行かないとか、中堅の治療院にマッサージ師として勤めているが、数カ月間自宅待機が続き、この間、一切の給与や手当が支払われず生活が苦しいなどといった相談もある。

自営業者等を対象とした持続化給付金や、国民1人に10万円ずつを配る特別定額給付金の制度はあるが、コロナ禍の長期化により、それだけでは生活を維持できない人が増えているように感じる。

ところで、政府による経済的支援策には、大きく分けると、金融機関などからお金を借りやすくするタイプのものと、直接お金を受け取れるタイプのものがあるが、自営業者や会社員にとって、借金はやはり避けたいところである。そこで、今回は、最新情報も含め、持続化給付金と特別定額給付金以外の、お金が受け取れるタイプの助成金について紹介してみることにする。

2.住宅確保給付金について

治療院の経営悪化や失職等のため、自宅の家賃を支払うのが苦しいという方は少なくない。そのようなときに使えるのが、「住宅確保給付金」だ。

この給付金は、経営の悪化した自営業者や、給与の引き下げ、解雇などのために月の収入が減少した労働者のうち、世帯収入が各自治体の設定する基準額以下になった方が対象だ。例えば東京23区の場合、3人家族であれば基準額は、月の世帯収入17万2000円以下、預貯金100万円以下となっている。

収入が17万2000円以下ならば、6万9800円を上限に実際の家賃の金額が給付金として支給される。一方、基準額を超えた場合でも、24万1800円(基準額+上限支給額)以下ならば、月の世帯収入から17万2000円を減算した金額を、実際の家賃(上限6万9800円)から減算した金額が支給される。

この給付金の受給が決定すると、毎月の家賃が原則3か月(最長9か月)、行政から大家に支払われることになる。

この助成金の申込みは、各市区町村の窓口で受け付けているので、お住いの地域の市区町村役場に問い合わせてみてほしい。

3.家賃支援給付金について

次は、事業用不動産の家賃の支援について。7月14日より、土地や建物を借りて事業を行っている中小法人(会社に限らず、社会福祉法人やNPO法人なども含む)および個人事業主に対して、事業用に借りている不動産の地代や家賃の一部を国が助成する「家賃支援給付金」の申込みが始まった。

対象となるのは、今年5月から12月までの間に、売り上げが前年同月に比べて半分以下になった月があるか、売り上げが3カ月連続で前年同月の7割以下になった中小法人と個人事業主である。

この助成金の受給が決まると、基本的に毎月の地代・家賃の3分の2の額の6か月分(ただし法人の場合は最大600万円、個人事業主の場合は最大300万円)が受け取れる。

受給の申請は、特設サイト(新しいウィンドウで開きます)にアクセスしてインターネットで行う。この手続きは、視覚障害者が単独で行うのは極めて困難であるが、持続化給付金同様、全国に「申請サポート会場」が設けられており、ここに書類を持っていくと、入力手続きなどを手伝ってくれる。ただし、現時点では事前の来訪予約が必要で、上記サイトもしくは電話予約窓口(0120-150-413)から申し込む。

手続の方法などについて、不明点は、家賃支援給付金コールセンター(0120-653-930)に問い合わせをしてみてほしい。

4.新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金

新型コロナの感染拡大防止などのために従業員を自宅待機にした場合、雇用主はその期間中、最低でも平均賃金の6割以上を休業手当として従業員に支払わなければならない。しかし、雇用主がこのルールを理解していないか、支払いのためのお金が用意できないために、雇用主から休業手当を支払ってもらっていない方がいるのが現実である。

7月10日より、このような方に対し、国が、自宅待機などで給与も休業手当も受け取れなかった期間の平均賃金の8割相当額を支給する「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」の受付が始まった。

この給付金は、事業主経由で申請することもできるが、労働者本人が申請するものである。申請から約2週間程度で従業員自身の講座にお金が振り込まれるので、雇用主が休業手当について理解がなかったり、休業手当を支払うだけの余力がなかったりする場合にもお金を受け取れるもので、これまでにない画期的な制度ということができる。

こちらの申請は、必要書類を厚生労働省の受付窓口に郵送する方法で行うことになっている(今後オンラインでの申請も予定されている)。しかし、この手続きもまた、全盲の視覚障害者が単独で行うのは不可能であるため、速やかなサポート体制の整備が求められる。

問い合わせは、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金コールセンター(0120-221-276)で受け付けている。

5.終わりに

先の見通しが立たないと誰しも不安になる。しかし、スタンフォード大学のクルンボルツ教授によれば、人生の8割は偶然でできていて、人生とはもともと予定通りにはいかないものなのだとのこと。でも、一方で、好奇心、継続性、柔軟性、楽観性、冒険心の5つを持ち続けていれば、良い偶然を自ら引き寄せることもできるそうだ。様々な助成金を活用しつつ、素晴らしい偶然を待とうではないか。